今日は調律の日。
ピアノの調律は年に2回行っている。使用が激しいので3回くらい必要かも知れないけどすばらしい調律のおかげで無事2回ですんでいる。
今日はスタジオ2の2台を調律していただいた。明日はスタジオ1だ。
ピアノ(ここでのピアノとは電子ピアノやキーボードではなく、グランドピアノ・アップライトピアノのことです。)はアコースティックな楽器なので、いつも私たち生き物のように呼吸すらしているように感じる。暑い日が続けば夏バテしたように音の保持が厳しくなることもあり、また湿度が高い日が続けば蒸し暑さでも感じているかのごとく一時的に音に透明感がなくなることもある。私たちは、その、生き物であるピアノの音に耳を澄まし、彼らの音を全身全霊で聴くことによってのみ、初めとてピアノと会話するのだ。
そのピアノが近年猛烈な値上げになっている。日本はピアノの普及率が世界でもトップであり、また少子化や景気もあり、ピアノの需要が減っているからだ。機種によっては年に10万円以上の値上げも・・。このままではピアノはますます手の届かない楽器になってしまう。せっかく縁あってピアノを始めた一人でも多くの人に、アコースティックな楽器であるピアノの良さを知ってもらいたい、と思う反面、住宅事情や防音問題はさらにシビアさを増してきている。せめて、私のスタジオに来てくれたときだけでも、この愛おしくてたまらないグランドピアノの良さを味わってほしい。
ピアノの値段が上がっているせいか、最近はグランドピアノの中古を探す人も増えてきている。しかし、日本で中古に出てくるグランドピアノの多くは海外に輸出され、なかなかよい楽器に巡り会えないのも現状だ。そもそも出回っている中古グランドの数が以前より猛烈に少なくなった・・。
ピアノは年を経ていくとともに自動車のように大幅な手入れが必要になっていく。自動車の定期点検こそまさに調律(場合によっては整音・整調)なのだ。もちろん、古ければきちんと整備することによってクラシックカーのような意味での価値が生まれることはあるけど、コンサートグランドが年を取っていくにつれて100年後200年後にその性能を新品時以上に上げていくことは名器と呼ばれるバイオリン達と違ってないのである。
音楽に興味のあるあなた、ぜひアコースティックなピアノの音の美しさを味わってみませんか。楽器店などピアノの置いてあるところで、単音でもいいから、鳴らしてみてください。その時に、ピアノの音が鳴り始めてほぼ同時に急激に膨らむ艶のある丸い響き、その後急速にしぼんで最後には消えてしまう響き、はかないまでの音の一生を最後、音が全く聞こえなくなるまで、最大の集中力で聴いてあげてください。ピアノは、必ずあなたに「僕を鳴らしてみないかい、一緒に歌おう♫」と言っているはずです(笑)